インカレ2001を見て                                鈴木康史   2002/03/11

 

「筑波の5年」で、去年、はなから走順は決まっていたように書いていた。しかし、白状すると、ときどき僕の頭の中をよぎった別の走順があった。それは、野口か谷中を1走にして、残り3人を後ろに並べる、そういう走順だった。ほんとに優勝を目指すためには、これしかなかったことぐらいはわかっている。本番の走順以上に、優勝の可能性が広がる走り方である。だが、リスクも当然大きくなる

冷静に現実を見た。未だ筑波に比して早稲田が強すぎた。賭けても届かない可能性が大きかった。だからこの走順は頭をよぎりはしても、形にはならないまま、早々に却下される事となった。これは、力不足で、賭けることができなかったということだった。あまりに勝ち目の少ない勝負だったから賭けられなかった、そういうことだった。選手も、そして僕自身も、まだそこまで達してなかった。

今年、インカレ前、小泉のHPのトップに、「賭ける」という決意が流れていた。昨日、走順を見て、なるほどと思った。去年、早々と断念した戦い方が出来るだけのチームが作れているのだということが、あの走順からわかったからだ。

昨日の選手たちは、その賭けに敗れて、泣いている選手たちだ。たぶんそういうことだ。だが、あの状況で、堂々の走りをした、佐々木、増田、小泉は、選手として成長したなあと思う。去年とはまったく違う力強さがあった。あそこから「這い上がる」といえる強さ。これは、これからの君たちを支える、本物の強さだと思う。

 そしてまた、賭けに負けた武政の事は、愛好会が覚えておかないといけない。今回は彼が最もリスクを背負っていたのだ。一番負ける可能性の大きい役割を与えられていたのだ。その賭けとは、いつも書いているように、個人の努力ではどうにもならない領域にあるものである。負けたのは、武政ひとりではなく、彼にその賭けをさせた愛好会だ。

 だけど、去年は賭けることが出来なかった、今年は賭けに参加できた。それだけで、僕は見ていて嬉しかった。賭けの舞台に立った学生たちみんな、さらに賭けに踏み切ったオフィシャルの藤城、野口にも、敬意を表する。僕には出来なかったことだから。

 この遺産は、引き継がれる事だろう。