オリエンテーリングのエッセンス  〜2nd Edition〜

2001/8/8 鈴木康史


改定のポイント
集中力とプランニングとランニングの関係がもっと複雑であるということ
旧エッセンスはプランニングの項が甘かった
予期についても強調した
もはやエッセンスではない

@走力  ないと話にならない
       必用なもの   strength-technique-speed
       さらには change of pace意図してスピードを落とせる、意図してスピードを上げない
 =スピードアップには情報処理系からの「許可」を取り付けること
       運動感覚が重要
       集中力の養成も可能=情報処理系とのリンクが大切
     次に踏み出す一歩の意味は?
ランニングをメタレベルから制御する「意識」

ある瞬間を取ると、われわれは、次の一歩を踏み出すか、地図を見るか、の二つの選択肢しか持たない
レース中、ほとんどの時間を、われわれは足を前に出すことに使っている。無意識的な領域
もはや癖のレベル
そこで、踏みとどまること/行くこと、を情報処理の状況に応じて=確信度/不安度に応じて
冷静に「命令」できる意識。癖を意識して直すことの困難を思え
特に疲れてくると、われわれは癖のみで動き始める
良い癖を身につける=反復練習による自動化

これらがオリエンテーリングのもっとも深い集中を向けるべきところ(K参照)

Aプランニング 
=意識をどこに向けるか、を決定すること
=どこに集中するかを決めること(Kも参照)
   最も重要なのは「明晰さ」「確信」  あいまいなままでは意識が拡散=集中してない

      「レッグのポイント」はどのレッグでもそう多くはない
     そのポイントを見出し、そこに意識を向ける+その他のところをシンプルに

必ずしも、すべてをきちんと決めることではない、結果オーライも大切
きちんと決めないがゆえの利点もある=ただし、決めていないことをわかっていること
     =メタレベルからのプランニング、行ってみて判断する=Bへ

B現地読み
      地図読みはいわば誰でもできる差のつかない領域、地図は有限=他人の解釈物
      むしろ現地読みこそが差をつける  
     現地を意味のある情報として切り取ること 意味のある情報とは何か?? "see"
      
   見えることの重大な意味  不確定性から確定へ(確信度最高値)
     逆に、見えているようにオリエンテーリングすること、そこまでの確信を持てるプラン、実行
        地形の中に身を置くこと、いくつかの特徴物の位置関係から、進むべき方向を流れの中で知る

3種の読図の認識  @意識的  A無意識的/半意識的  B意識にないもの
           これらに対応した現地読みとは
@	意識的に記憶した地形を「出現させる」こと(「出現する」ではない)
(=決めたルートをたどることの積極的解釈)
         A無/半意識的な地図情報を現地読みによって意識化すること
         B意識にないものを見つけたときに適切に対処すること
    
    現地読みの基礎とは
       @きょろきょろする癖=地図を見たら左右を見る癖  日ごろの練習で身につける
       A地形の変化、現地情報に敏感になること
          自分が進もうとする方向への集中を高くすることと通じる
          ついでに、方向の変化にも敏感になること
       B地図だけ見ているより、現地へ行ってみた方がよくわかることもある

Cコンパス走
   あらゆる場面で使える技術(長所)
   それゆえの、その他の情報に対する集中の低下(短所)
     予期をすること+遠くを見ることで短所を補う
これを手続き動作の中に組み込む(D)こと=反復練習
      
D方向維持と手続き
      左右にずれないとわかっていること→地図の検索範囲が狭くなる
   現実に左右にずれないこと→予期したものが出現する
      前後も同様(歩測、よくわかる特徴物 catching feature を使う)
    方向決定・方向維持の際に地形を使う
現在地を決定しつつ、方向も決定可能。コンパスはその確認に使用
      流れの中で行うと=手続きそのもの(正置練習2)

E3種の地図読み
      Tプランのため
      U現在地決定のため
      V方向決定のため
        特にUVを区別しよう    この区別を自動化するための、日常的技術トレーニングが必須

Fオリエンテーリングの3大技術(手続きを簡略化)
         →現在地決定 (正置、現地と地図の対応)@CP
       ↑    ↓
       ↑   方向決定(正置、地図と現地の対応、そっちを向く)@CP
       ↑    ↓
        ←方向維持(=ラインたどり、コンパス走)(予期、歩測をしながら)
             
     このうち、チェックポイントでは、上二つの作業をせねばならないので大変
  
G予期はなぜ重要か   「現在地決定」に使用
        予期をすることで、現在地決定が、その地点に到着する以前に終了
          Dの二つの作業が一つに減る=どたばたしないオリエンテーリング
    CP,APでよどまないこと=止まらないオリエンテーリングへ
    さらに、次に向かうラインまで予期していれば完璧
     
H確信を持って動くこと=スピード・リズムあるレースが可能   そのためには何が必要? 
        現場では  三原則プラス1
現在地確認
方向・距離・予期
        それ以前に  あるラインがたどれると自分でわかっている


      「確信度/不安度」が常にチェックできていること  
           = 確信を持って走っているとわかっていること
             & 不安を持って走っているとわかっていること
          不安をそのままにしない、次の手続きにまで積み残さないこと
不安があったら、それを解消するためのプランニングを意識化する
つい走ってしまうことはしばしばだが、そのときに進んでいる一歩一歩にはまったく意味が感じ
取れないと思う。その感覚を放っておかないこと。
       
Iある技術が「できる」とは
         実際にできること + できると自分でわかっていること(メタレベル)
        「オリエンテーリングの技術に上手下手はない。あるのは、その技術ができるとわかっているかいないかの差だけだ。」
      これができていない場合  プランニングの時点で、確信を持てない
                地図の要検索範囲が飛躍的に増大

Jラフオリエンテーリングとは  
         精密なオリエンテーリングのこと
         精密な行き当たりばったり、っていう感じかな

   地図と切れている(リスク)ことをわかっている、ので、それに対する対策として、
わかりやすいものに当てる(危機管理)

K集中力
    オリエンテーリングとは、ランニングと読図のバランスを取る競技ではなくて、
   「ランニングと読図、双方に振り向ける集中力のバランスを取る競技」
    双方の集中力をメタレベルからコントロールする「意識」の必要性
  ランニングと読図は渾然一体となってバランスを取っている
     例 単なる道走りでも「今自分は地図と切れている」という形で地図に集中力を向けていること
つい一歩踏み出してしまう下りのレッグで、今走るとだめだ、地図が読めてないぞ、と命令できること
おやっと思った瞬間に、ランニングに向けていた集中力を地図に向けられること(慣性、惰性に負けな
い意志)

L心構え 
    オリエンテーリングは面白いけれども楽しくはない。
面白いと楽しいはカテゴリーが異なる。集中力は「楽しい」からは出てこない
オリエンテーリングは我慢の競技(楽しむと、我慢が効かない)
つらいけれど、スピードを維持する我慢
     前に進みたいのに、地図を読む我慢
   オリエンテーリングは勇気の競技(勇気を出すのはしんどい、楽しくない)
     取り残されるのが不安でも、やるべきことをやるために、止まる勇気
前に進むのが不安でも、やるべきことをやって、前に進む勇気

M現象学
  意識の志向性 意識とは何か必ず対象を持つ
         しかも一つの対象に意識を向けているとき、それ以外のものは背景に退く
    意識を向けている対象=図
    その背後にある地平=地
      意識を切り替えることで、図と地は入れ替わってゆく
    オリエンテーリングは、まさに、この切り替えの競技
      常に図と地を切り替えられること、時には図を同時進行もさせ得る意識のあり方