ちょこっとLOVE (2001年3月まわりみちインカレ直後号投稿原稿)

鈴木康史


  ほんのちょこっとなんだけど
  髪型を変えてみた
  ほんのちょこっとなんだけど
  そこに気が付いてほしいぞ
  愛しのマイダーリン

去年の春、はじめてのミーティングで、僕自身君たちとの距離を取りかねていた、 あの時を思うと、今は夢のよう。来し方を振り返ることをしばしお許しいただきたい。 しかしあのとき、「優勝を目指します」なんてよく言うなあ、 と僕は妙に年寄りじみて感じていたが、 一年かけて、それをぐいぐいと手元に引き寄せた男子チームには、心から拍手を贈る。 一年間で一番伸びたチーム、これはインカレの歴史の中でもたぶん前人未踏の伸び方だ。 そしてまた、本当に勝っちゃった女子チームも素晴らしかった。 個人戦の日には、東北の3人の順位を見て、うちがメンバーから加藤をはずして、 しかもあの走順で、ほとんど誰もが東北の勝ちと思ってただろう。僕はだから、ラッキーと思ってたんだけど。 東北にまで魔法がかかったかなと思って。

  ほんのちょこっとなんだけど
  勇気をふりしぽった
  ほんのちょこっとなんだけど
  前に進んだ気がする
  愛しのマイダーリン

誰もが自分の壁を破れるわけではない。多くの人は、自分の前にそそり立つ壁を壁だとすら思わないままに日々を送る。その壁が壁であると気づいたとき、第一歩が始まる。スラムダンクにこういう言葉があったような気がする。「上達は、おのれの下手を知りて一歩目」 自分の下手を知る勇気。絶望的に高い壁を直視する勇気。そしてそれでもなお、いやそれだからこそ、一歩前に進む勇気。たくさんの勇気をちょこっとずつ振りしぼろう。「勇気」これが新しい年のテーマ。ちなみに、今年は「粘り」だった。黙ってたけど。

  ねぇねぇもっと
  楽しい事から始めませんか?
  ほらほらGood!
  ステキな恋愛いたしましょ
  おやおやもっと
  シゲキの強いのお望みですね?
  そいつはこまった(ですね)

麻薬のようなインカレの団体戦を再び味わうことができた。楽しすぎだ。こんなにも昂揚したのはいつ以来か。僕の最後のインカレ、僕自身の初入賞の時でさえも、これほどまでには高ぶってなかったかもしれない。インカレに出られなくなって、もう二度と味わえないと思っていたのに。 今回は7人分の刺激が僕を貫いた。特に、佐々木と塩田が、二俣と野口が、相次いでヴィジュアルコントロールに姿を見せた時、体中に鳥肌が立って仕方なかった。 1走から2走へ、スタート待機所は、僕と、小泉、上松だけ。ゾクゾクしまくってた。こんないい思いが出来るなんて。エース二人をトップで送り出す筑波大。かっこよすぎる。 女子のウィニングランのあと、増田一人が未出走の時、冷静な振りをしていたが、その時もゾクゾクは継続中だった。おいおい、全員完璧じゃないか、どうなってるんだ。うそじゃないだろうな、云々云々・・・。アンカーが出ればあとは祈るだけ、ちょっとほっとして、けど、もう何も出来ない。遠いところで闘ってる選手を想うだけ。もう僕にはそれで十分だった。最後の西村と増田の一騎打ちは、大きすぎるおまけだ。

  恋という字を 辞書で引いたぞ
  あなたの名前そこに足しておいたぞ
  夢という字を 二人で書くぞ
  一人よりも楽しいぞ。。。。。

オリエンテーリングは一人でどれだけトレーニングしたかで勝負が決まると僕はずっと思っている。孤独にどれだけ耐えられるか。僕はそういう気性なんだろう。簡単に人と解りあえるとは決して思っていない。いくら身体を重ねても、何万言を費やしても、通じないものは通じない。だけど、こういうことを言ってしまうというのは、それでもなお、僕があなたとつながれるんじゃないか、という一縷の希望を持っているからなのだろう。やっぱりみんなといるのは一人よりも楽しい。そんなことを思いながら、何とかつながろうとして、一年かけて、僕がみんなにかけた魔法は、何だったんだろうか。僕の言葉は通じたのか?

  ほんのちょこっとなんだけど
  メールを送りますよ
  ほんのちょこっとなんだけど
  友情の証ですよ
  愛しのマイフレンド

自分で嫌になるのは、時々ふっと醒めてしまうこと。どうしてこんなに難儀な性格なのか。だけど、今回のインカレでは、木曜日から日曜日まで、一貫してハイテンションだった。藤城君に感謝かな。彼は僕の乗せ方をよくわかっている。行きの車は面白かったよ、藤城君、谷野君。かとまりさん、内田君もありがとう。

  ねぇねぇもっと
  簡単な言葉でOKですぞ
  ほらほらもっと
  素直な思いを伝えましょ
  おやおやなんと
  シゲキ少ない方をお選びですか?
  謙虚なあなたが(スキ)

言葉を相手に入れること、今年は一貫してそれを目指してきた。これは僕の研究テーマでもある。リアリティある言葉はなかなか吐けるものではない。それには相手をそのように持っていかないといけない。素直な思いを伝えるには、手練手管が必要ということ。一年かけてやっと一言を君の心に響かせる。そういうことが、しかし、今年は何度か経験できた。

  愛という字を 思い出す時
  家族の顔が先に浮かんできたぞ
  ささやかだけど先へ進むぞ
  愛しい人All you need is LOVE

「一歩前へ」、さっきそう書いたけど、一歩前に出ることは実は難しい。だから半歩でもいい。半歩を二回やれば一歩になる。半歩が難しければ、ささやかにつま先を前に出す。少しでも前に。ところがところが、そのささやかを積み重ねると、いつの間にか風景がを変わってる。ある日君は全然違うところにいる自分に気づくだろう。

  愛しい人All you need is LOVE
  愛しい人All you need is LOVE
  愛しい人All you need is LOVE。。。。。
  愛しい人All you need is LOVE。。。。。

最後に、また、しつこく、同じことを繰り返しておく。きちんとインカレを反省しておくこと。インカレも一つのレースに過ぎない。ちゃんとアナリシスを書いて、ちゃんと分析して、次のレースに生かすこと。そういう地道な作業がまた始まるのだ。地図読み正置走、ルートプラン練習etc...一年は短い。こういう技術はそう簡単に身に付くものではない。今始めないと手遅れなものがたくさんある。もう君は、来年のインカレに向けて、すでにミスをしていないか?だけど、大事なのはミスをしたあと。ミスを最小限にするためにいま何をやらなければならないのか。 それを揺るがずにやり抜くという、この本当に難しいことを積み上げてゆくことこそ、貴い。レースと同じく、やるべきことを徹底的にやり抜くこと。その集中力、執念。本気で願うということはこういうことで、それはかくも難しい。一年かけて、それが伝わってれば幸い。だけど、やっぱり僕も弱虫で、踏み込めなかった所がいっぱいあった。マル。

2001.3.21 だけど未完


おまけ

新しい練習「道の乗り換え練習」または「道の分岐(=CP)で止まらない練習」 これは、地図読み正置走をちょっと実践向けにしたものです。もう少し面白いかな、分かりやすいかな、と思って。 ややこしい道の分岐は不要。普通の道の分岐で十分、学内マップで十分。

ゆっくりとオリエンテーリングする。道の分岐が出てくる。その道の分岐で立ち止まらないようにする。そのためにはいつ地図を見ておかねばならないのか?何を考えていないといけないのか?いつ現地を見ればいいのか?いつスピードが落ちるのか?どうすれば不安なく道の乗り換えが出来るのか? ルールは一つ「道の分岐で止まらない」。むしろスピードが上げられるぐらいに。

このときの動作、思考パターンを徹底的に体で覚えること。いつ正置をするのか、いつサムリーディング動かすのか、首の振り方、など、一年間僕が言ってきたことをすべてを含めて。

オリエンテーリングはこれの応用に過ぎない。各チェックポイントでこのような動作をきちんとできれば、手続きはよどみなく流れる。つまり、この練習は、手続きのエッセンスを、分かりやすい道の分岐を使って、身につけようというもの。

これが完璧に出来るようになれば、あなたはもう日本代表だ。 地道なことを徹底的にやり抜くことこそが常に一番難しい。レースでも、これから一年間でも。